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(2)ゼコの憂鬱

前シーズン(2009-2010年)はクラブ史上初となるCLリーグでの戦い、並びにブンデスリーガ連覇という使命感に燃え、なんとか奮闘したゼコだったが、

流石にこの一件で、クラブに愛想を尽かしてしまった。


当然と言えば当然の成り行きである。

実はゼコは2009年の夏、クラブとの契約を2013年まで延長している。
これは彼のクラブに対する愛着、また正当な報酬を受け取るための措置ではあったが、もうひとつ

ビッグクラブから適切なオファーが届けば、クラブはゼコを無理に慰留はしない

という約束があったからに他ならない(ゼコ本人が幾度か口にし、またクラブ側も否定はしていない)。

こうした背景があったからこそ、ゼコは喜んでヴォルフスブルクとの契約更新に応じたのだ。
彼としては自身の将来を真剣に考えた上で、現所属のヴォルフスブルクのこともおおいに信頼し、誠意を見せた(フリートランスファーでの移籍は避け、クラブに相応の移籍金が入る形を受け入れた)格好と言える。

だが、この約束は結果的に、ゼコの思いとはまったく異なる形で施工されることになる。

何せヴォルフスブルク側が『適切なオファー』とした価格が、前述してきた通り
どう考えても法外な金額
なのだ。

誰もが認める逸材とは言え、ゼコは過去のインタビューを見る限り、自らの価値を正確に自覚している。
現時点での自分にビジャ、イブラヒモビッチ、フェルナンンド・トーレスらと同等の価格を付けること・・・その“意図”が理解できないほど、この青年は愚かではない。

あるいはヴォルフスブルクとしては、実際にゼコのプレーに対し、それだけの価値を見出したのかもしれない。
だが、フットボーラーの価値はプレーの質だけで決まるわけではないことは、過去数々の例によって明らかである。

フットボーラーとしての能力に疑いようはない。
他方、客寄せやスポンサーの招致、いわゆるマーケティングという点に関して、つまりスタープレイヤーとして見た場合、今のゼコにはほとんど価値がないのだ。

ゼコはあくまで、これから伸びる選手、成長を楽しみにされる選手。

彼のプレー見たさに皆がスタジアムに足を運び、TVのチャンネルを回すようなプレイヤーではないということだ。
いくら才能豊かな原石と言えど、これではビッグクラブが購入に二の足を踏むのも致し方あるまい。


○才能豊かな若手が、自らの未来を塞がれることの意味

結果として、ゼコは愛するクラブに裏切られた形になった。

いくら自分がよいプレーを見せようと、ビッグクラブへ移籍の道は閉ざされたままだ。
契約期間はまだたっぷりある。チームは混乱が続き、昨季までの強さは影も形もない。
この状況でモチベーションを失わない方がおかしい、馬鹿げた状況であることが窺い知れるだろう。

2009-2010シーズン、ゼコは奮戦していた。

ふがいないチームにあって、必死にパッションとモチベーションを絞り出し、2年間連続での二桁得点達成(それどころかこのシーズン、ブンデスリーガの得点王に輝いている)とCLでのゴールは、充分評価に値する数字である。

・・・否。あるいは、それ以上かもしれない。
チームから連動性が失われていた分だけ、むしろ1ゴールあたりの価値は、前年より高く評価されて然るべきだろう。
何せこの昨季のチームは優勝した2008-2009シーズンに比べ、総ゴール数が実に16得点も減少しているのだから!(80→64得点。ちなみに失点は41→58失点と大幅アップ)

結局このシーズン、ヴォルフスブルクはCLどころか、ELの出場権すら手に入れることができなかった。

必死になってバケツで水を撒いているのに、目の前の砂漠は自分の努力をすべて無表情に吸いとっていく。
点取り屋にとって、自身のあげた得点が結果に結び付かないことほど、疲労を感じることはない。


ゼコの年齢は24歳。
若いと言えば若いが、決して悠長に構えていられる年齢ではない。
現に同世代の有望株たちは、次々とビッグクラブへ移って大きな結果を残している。

加えてW杯イヤーならではの現象が、ゼコの精神を追い詰めていく。
具体的に言えば、南アフリカの地で躍動した、アヤックスのルイス・スアレスやブレーメン(当時)のメスト・エジルら、何人かの選手に対する評価&価格の急騰と、それに伴う選手の大移動である。

国際的には無名だったような選手が、一躍南アフリカの戦いで評価を高め、ステップアップを成し遂げていく。
一方、この大会をTV観戦した自分は、いまだにヴォルフスブルクという牢獄に閉じ込められたままなのだ。



牢獄からは空も見える。海も見える。

目と鼻先に新たな戦場と、自らの価値を満天下に知らしめることのできるクラブが、
偉大なクラブでプレーする、偉大な選手たちの姿が拝めるのだ。

だが動けない。

己の二の足には重い、重い枷が付けられているからだ。

一分一秒を無駄にできない、フットボーラーとしての価値を世間に証明するための貴重な時間は、こうしている間も悪戯に摩耗させられていく。
自らの意思とまったく反する、クラブの私的な思惑によって。

果たして、ゼコの胸中如何ばかりか。

この状況で覇気のあるプレーを見せろというのは、あまりに酷という他ない。



彼はプロとして、最低限の責務は果たしていた。
少なくとも機嫌を損ねて練習をボイコットするなど、マリオ・バロテッリやアドリァン・ムトゥのような規律違反問題は、ゼコの周辺からはまったく聞こえてこなかった。

しかし一方で、まさに矛盾と言う他ないのだが・・・
いいプレーを見せれば見せるほど、チームが結果を残せれば残せるほど、ビッグクラブへの道は狭まっていく。
何故なら自らの保有権を持つヴォルフスブルクが、自身のプレーがゴールを生むたび

ほれ見たことか! これがゼコの力だ!
絶対に安売りはせんぞ!!


と鼻息を荒げ、ますます高値の売却に固執する性質を高めていくからだ。

この事実が日々の練習や試合から集中力と熱意を奪い、単なる作業にしてしまった感は否めない。

どれほどいいプレーを見せようとも、自身がどんなに努力を重ねても、
それは決して自分の輝かしい未来を保障してくれるものになり得ないのである。
むしろ、逆の効果しか生まないとすれば・・・?


――わかりきったことと思うが、あえて言わせてもらいたい。

こんな状況で、選手がまともにプレーできるわけがない。

マクラーレンがモチベーションのきっかけにと与えた、キャプテンマークなど邪魔なだけである。
むしろこの決定は、モチベーションをすっかり落として覇気のないプレーに終始するゼコがバンドを身に付けることによって、
他の選手たちまでが努力することを厭い始め、結局チーム全体の士気が低下していく
という、典型的なマイナス効果しか生まなかった。

ゼコは今やチームの和を乱す、集団としての機能性を低下させる異物になってしまっていたのだ。

だが、そうさせたのは言うまでもなく、ヴォルフスブルクというクラブ自身である。



当然の話だが、今シーズンのゼコは不振を極めた。
守備には走らず、攻撃の際にはどこか気の抜けたプレーが多く、最低限のゴールは決めるがそれ以上の仕事はしない。

新加入のジエゴもまた、守備のタスクを極力削り、組み立てと崩しの全権を与えて攻撃に専念させてこそ持ち味を発揮するタイプの選手である。
守備をほとんどまったくしない(できない)選手が2人もいれば、チームバランスは必然的に悪くなろうというものだ。

まさに悪循環極まる事態と言える。

とあるインタビューでゼコ自らが口にした、

ヴォルフスブルクに捕らわれた囚人

という表現。
彼が自身の置かれていた境遇と心情を言い表すのに、これほど的確な言葉もないだろう。
同時にこんなコメントを発するような選手が、もはやチームのためにまともに働ける訳がないのも道理だった。

こうしてチームは、出口のない袋小路に迷い込んでしまったのだ。
彼らの決定が、選択がいかに愚かだったのかは、何よりも結果が証明している。


エディン・ゼコは、充分にチームを愛していた。

貢献もした。
辛いことにも耐えてみせた。

だがクラブは、彼の求めているものをまったく与えることができなかった。

――愛が冷めるのは必然である。

続く

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【2011/01/12 23:14】 | その他特定選手に関すること
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No title
junchang
恐れ入りました!
昔サッカーダイジェストで「ギュンターネッツァー物語」と言うものがあったのですが、それを読んでいる感じがしました。
私は現在のサッカー世界はほんの触り程度しか知りません。悲しいのですが、本当の本質がわからなくなってしまっています。私は情報を発信しようとした場合「たわごと」としてごまかしてしまっているのです。

白面さんがすごいのはきちんとしたリサーチに基づいた情報を自己分析し、自分の言葉で表現できることですね!
例えば現状に批判的な発言であっても説得力があるわけですね!

見習いたいです・・・・!

ちくしょう!!
岩氏
ゼコの気持ちになってきた!!(笑)

才能があり過ぎるという事は時として自分を追い詰める足枷になってしまうんですね・・・


岩氏もそう・・・・


いや、岩氏は何も無いですけど。


早く!早くマン・Cへ旅立つゼコの話が聞きたい!!
早く牢獄から開放してやっておくれ~(笑)

お返事遅れまして・・・
白面
更新も遅れまして申し訳ございません;

>junchangさん

自分に限らず、すべての人の手記は常に誰かの模倣品であり、オリジナルと思うのです。

自分から事実に即したものを書こうと思った場合、そこに一切の主観が入った表現が入ってはいけないと思うのですよ。でも、それじゃ面白みがありません(笑)

だからライターさん方はそれぞれ、自分の味を探します。
それが偏っていても、極端な話間違っていてもよいと思うのです。重要なのは「面白い」かそうでないか、それだけで・・・すべて「娯楽」として存在するものですからねw

というわけで、自分のそれはゼコやヴォルフスブルクの事情を、自分の感情を元に恣意的な解釈を加えた脳内小説のようなものです。

年末までで一度以前の手法、事実関係のみに基づいた報告は息切れ状態になりましたもので・・・
ちとやり方を変えてみてる、とそういうことでございます(苦笑)

>岩氏さん

>才能があり過ぎるという事は時として自分を追い詰める足枷になってしまう

達見と思います。
というより、自分の人生哲学のひとつなんですよね・・・これ(苦笑)

例えば極端な話、人殺しの才能だけが突出した人がいればどうなってしまうのか。
サラリーマンも公務員もできず、自分で店も持てず学もない。
だけど人殺しだけは、超高効率で遂行できる才能があるとすれば・・・?

ゼコの場合はまだ、自ら望む道を進み、それで生活できて世界のトップシーンに顔を出せている分だけ幸せな方でしょう(笑)
それでも時として、メガクラックにはこうした事態が起こってしまう。
クラブは選手の能力とキャラクターを理解した上で、自分たちの元へ留め置けないと判断した際は、速やかに売却を考えねばなりません。
タイミングは勿論、移籍金を含めて最も効率的な売却先を探さなければならない・・・というのが自分の持論なのです。

なお自分には、あれこれ考え過ぎて結局八方塞がりになってしまう才能と、放っておくとどこまでもだらだらできる才能があります(泣)


明日か明後日、近日中に更新しますので、今しばらくお待ちを;
ゼコ視点で書くことはもうあまり多くはありませんので、それほどかからないとは思います。

他方、ゼコ視点だけでは不公平につき、一段落後はヴォルフスブルクをクラブ運営視点でも考えていく予定です。
というか、書いてて思ったんですが・・・これ、ヴォリューム的に次回の同人誌にでもした方がよかったかも(汗)
膨らみすぎて困っておりますorz

ゼコ!
エリトナン
正直申しまして、
白面さんのブログで、初めてゼコを知りました。

優秀な選手が、優秀すぎて、こんなつらい思いをするとは!
サッカー選手は広いサッカーの世界で、フィールドの上で、プレイするのが最大の喜びですのに。
ファンも彼の勇姿をみて元気づけられるものです
金持ちの道具ではありませんから。

続き、楽しみにしてます(^^)






Re: ゼコ!
白面
コメントありがとうございます。
自分のコラムをきっかけで、ゼコという選手のクオリティが少しでも伝わったのでしたら幸いです。

無論、ヴォルフスブルクが全面的に悪いわけではありません。
他方、多くを間違えた感は否めない。特に感情面のエネルギー、モチベーションの問題と、チームバランスを充分に考慮にいれたマーケティングができなかったこと、この2点は如何ともし難い部分と言えるかと思います。

今後は人情的な視点ではなく、よりドライに経営的な視点からヴォルフスブルクについてメスを入れる予定です。

日本代表の長谷部選手が所属するクラブでもありますので、是非この機会に同クラブに関する興味関心を高めていただければと思います!

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コメント
この記事へのコメント
No title
恐れ入りました!
昔サッカーダイジェストで「ギュンターネッツァー物語」と言うものがあったのですが、それを読んでいる感じがしました。
私は現在のサッカー世界はほんの触り程度しか知りません。悲しいのですが、本当の本質がわからなくなってしまっています。私は情報を発信しようとした場合「たわごと」としてごまかしてしまっているのです。

白面さんがすごいのはきちんとしたリサーチに基づいた情報を自己分析し、自分の言葉で表現できることですね!
例えば現状に批判的な発言であっても説得力があるわけですね!

見習いたいです・・・・!
2011/01/13(Thu) 10:27 | URL  | junchang #-[ 編集]
ちくしょう!!
ゼコの気持ちになってきた!!(笑)

才能があり過ぎるという事は時として自分を追い詰める足枷になってしまうんですね・・・


岩氏もそう・・・・


いや、岩氏は何も無いですけど。


早く!早くマン・Cへ旅立つゼコの話が聞きたい!!
早く牢獄から開放してやっておくれ~(笑)
2011/01/14(Fri) 14:10 | URL  | 岩氏 #-[ 編集]
お返事遅れまして・・・
更新も遅れまして申し訳ございません;

>junchangさん

自分に限らず、すべての人の手記は常に誰かの模倣品であり、オリジナルと思うのです。

自分から事実に即したものを書こうと思った場合、そこに一切の主観が入った表現が入ってはいけないと思うのですよ。でも、それじゃ面白みがありません(笑)

だからライターさん方はそれぞれ、自分の味を探します。
それが偏っていても、極端な話間違っていてもよいと思うのです。重要なのは「面白い」かそうでないか、それだけで・・・すべて「娯楽」として存在するものですからねw

というわけで、自分のそれはゼコやヴォルフスブルクの事情を、自分の感情を元に恣意的な解釈を加えた脳内小説のようなものです。

年末までで一度以前の手法、事実関係のみに基づいた報告は息切れ状態になりましたもので・・・
ちとやり方を変えてみてる、とそういうことでございます(苦笑)

>岩氏さん

>才能があり過ぎるという事は時として自分を追い詰める足枷になってしまう

達見と思います。
というより、自分の人生哲学のひとつなんですよね・・・これ(苦笑)

例えば極端な話、人殺しの才能だけが突出した人がいればどうなってしまうのか。
サラリーマンも公務員もできず、自分で店も持てず学もない。
だけど人殺しだけは、超高効率で遂行できる才能があるとすれば・・・?

ゼコの場合はまだ、自ら望む道を進み、それで生活できて世界のトップシーンに顔を出せている分だけ幸せな方でしょう(笑)
それでも時として、メガクラックにはこうした事態が起こってしまう。
クラブは選手の能力とキャラクターを理解した上で、自分たちの元へ留め置けないと判断した際は、速やかに売却を考えねばなりません。
タイミングは勿論、移籍金を含めて最も効率的な売却先を探さなければならない・・・というのが自分の持論なのです。

なお自分には、あれこれ考え過ぎて結局八方塞がりになってしまう才能と、放っておくとどこまでもだらだらできる才能があります(泣)


明日か明後日、近日中に更新しますので、今しばらくお待ちを;
ゼコ視点で書くことはもうあまり多くはありませんので、それほどかからないとは思います。

他方、ゼコ視点だけでは不公平につき、一段落後はヴォルフスブルクをクラブ運営視点でも考えていく予定です。
というか、書いてて思ったんですが・・・これ、ヴォリューム的に次回の同人誌にでもした方がよかったかも(汗)
膨らみすぎて困っておりますorz
2011/01/14(Fri) 23:54 | URL  | 白面 #kMr7ovrQ[ 編集]
ゼコ!
正直申しまして、
白面さんのブログで、初めてゼコを知りました。

優秀な選手が、優秀すぎて、こんなつらい思いをするとは!
サッカー選手は広いサッカーの世界で、フィールドの上で、プレイするのが最大の喜びですのに。
ファンも彼の勇姿をみて元気づけられるものです
金持ちの道具ではありませんから。

続き、楽しみにしてます(^^)




2011/01/15(Sat) 18:24 | URL  | エリトナン #-[ 編集]
Re: ゼコ!
コメントありがとうございます。
自分のコラムをきっかけで、ゼコという選手のクオリティが少しでも伝わったのでしたら幸いです。

無論、ヴォルフスブルクが全面的に悪いわけではありません。
他方、多くを間違えた感は否めない。特に感情面のエネルギー、モチベーションの問題と、チームバランスを充分に考慮にいれたマーケティングができなかったこと、この2点は如何ともし難い部分と言えるかと思います。

今後は人情的な視点ではなく、よりドライに経営的な視点からヴォルフスブルクについてメスを入れる予定です。

日本代表の長谷部選手が所属するクラブでもありますので、是非この機会に同クラブに関する興味関心を高めていただければと思います!
2011/01/16(Sun) 16:21 | URL  | 白面 #-[ 編集]
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