インテルやカルチョに関する話題多め
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モウ・マドリー~1stシーズン総括~(3)「真の矛先」より続く。

Ⅱ:現在モウ・マドリーが歩んでいる道は、最適解と言えるのか・・・?

以上の通り、メディアを巻き込んだ一大ムーブメントが、確かに過激に過ぎる一方・・・
そこにはある程度の必要性があったことは想像に難くない。

むしろ、こちらの方がより深刻な問題だ。

これまで申し上げてきた通り、スペインリーグには"スペイン"という国が欲する方向性、文化性がある。
それに反した振る舞いは、当然ピッチ内外で相応の報いを受けることとなる。

3年前、イタリアにやってきたモウリーニョは、インテルでなんとか攻撃的な4-3-3、あるいは4-2-4を機能させようと腐心した。
が、それは結局叶わなかった。
クアレスマとマンシーニらの大不振という問題もあったが、それ以上イタリア・フットボールそのものが、そうしたスタイルで結果を出すことを、モウリーニョとインテルに許さなかったからだ。

翻って、今回はどうか?

・・・結果は出た。
そう。
最低限の結果は、この方法でも残しているのである。

5-0で圧敗した初戦を除き、それ以外は少なくとも可能性を見いだせる試合を、指揮官就任後半年足らずしか経っていない未成熟なチームが、少なく見積もって10年以上の月日をかけて練り上げられたチームに対して見せつけたと解釈できる展開ではあった。


それだけに、先が読めない


およそ3年間、ジョゼ・モウリーニョという男のことを追い続けてきて、これほど筆者自身の考えと彼の指揮が乖離を見せたのは初めてのことだ。
自分は開幕前に彼が言った、

攻撃的なチームを作るつもりでいる
レアル・マドリードはCロナウドをベースとしたチームになるべきだ

という発現の意図は、

高い守備力をベースに、CR7の爆発的な突破力・推進力を生かした、ダイレクト志向の高いチームを作る

ものだと解釈していた。

予想は半ば当たり、半ば外れている。

実際にCR7の攻撃力を先鋭化させたチーム構築は行われてはいた。
その結果が、これまでのリーガ最高記録を打ち破る、前人未到の40ゴールによるピチーチ(得点王)獲得だったのだから。



が・・・
一方で更に、攻撃の比重の二の手、三の手を模索しなければ、勝ち切れずに勝ち点を落とす試合が増えてしまう。

実際、今季の引き分け数は、昨季ペジェグリーニ政権下のそれに比べて実によく目についた。

それだけ守備が安定し、負け試合を引き分けに持ち込んでいるとも言えるのだが・・・
一方でそれも3試合、4試合と重なれば、ならば2勝2敗の方が、結果として取得勝ち点が増えることになるのもまた然りである。

さあどうする?
いつ舵を切る?どのタイミングでバランスを是正する?

その時期を今か今かと待ち続けたまま、シーズンが終わってしまった印象なのである。

インテルの初年度、ある時クアレスマをベンチからも外して4-3-1-2(ロンボ型4-4-2)にドラスティックな変換を施した時のインパクトは、自分にとって鮮烈なものだった。
その分だけ、今季のエル・ブランコにおける彼のマネジメントには、どこか歯に物が挟まったような印象を抱いてしまったのかもしれない。




少し頭を柔軟にし、その理由をを考えてみたところ・・・
大きく、2通りの可能性が浮かび上がった。

ひとつは前述した通り、1年目のプライオリティに“今後のための、チームの土台作り”を置いていた場合だ。

レアル・マドリードの選手たちは、それまで各クラブで敏腕を轟かせた、トップエリート中のトップエリート、スペシャリストの集まりである。
他のクラブで戦力外になった、契約を満了して流れ着いたような選手は一人もいない。

それだけに、思わぬ弱点として

自分が中心としてチームが動くことに慣れ過ぎている

という点が挙げられる。
少なくとも、筆者はそれがあると思っている。

チームプレイに徹する精神が備わっていたとしても、それと実践するための術、向き不向きはまったく別の問題だ。

例えば現在の陣容であれば、カカーがそうであり、Cロナウドがそうであり、ベンゼマがそうだ。
サブメンバーで言えば、ペドロ・レオンやセルヒオ・カナレスらにもそうした傾向がある。

良い悪い、という問題ではない。

彼らの多くは『本人が最もプレーしやすい環境をチーム内に整えられていた』影響でもって、これまでのキャリアを作り上げてきた者ばかり、という事実こそが重要なのだ。

ともすると攻撃が個人技頼みになる、チームがうまくいかなくなると一人ひとりが別々にゴールに向かうようになる――
すべてのクラブに言える現象だが、近年のレアル・マドリードに殊更そうした傾向が強いことは、こうした問題と無関係ではない。

故に、モウリーニョの"仕事"に時間がかかったのではないか・・・?
その可能性は、なかなかに高い。


何故インテルではうまくいったのか?

理由は大きくふたつある。
ひとつは、インテルには法律がなくとも、ロベルト・マンチーニによってある程度築かれた「戦術=イブラヒモビッチ」のシステムが既に存在していたこと。

そして皮肉にも、カルチョが現代フットボールの主流ではないこと。
そしてインテルが、そうした"速さや強さより、巧さや賢さ"を必要とするリーグの王であったからだ。

チームとして機能することを半ば余儀なくされるイタリアでは、トップクラブであるインテルの選手たちですら、厳正なルール下でプレーすることを免れない。

しかしそれだけに、指揮官の細かな指示や具体的な戦術指南を受け入れられる下地があった。
先日の比較文化論:イタリア編でも解説させていただいた通り、フットボールIQの高さが最大限に発揮された形である。




翻ってスペイン、しかもレアル・マドリードに集められるような選手であれば、フットボールIQよりもテクニック、スピード、パワーといった直接的な要素、取り分け

攻撃的な素養

に秀でた選手が揃うことは当然の成り行きである。
その分だけ、土台作りにも時間がかかってしまったのではないか・・・?
という訳だ。


加えて言うなら、土台作りに苦戦している間にチームがリーグ戦で早々とバルセロナに勝ち点で水を開けられ、リーグ戦のプライオリティが下がったという点は見逃せまい。

戦いは継続するにしても、リーグ戦が注力すべきコンペティションではなくなれば、貴重な試合時間を土台固め、来季への布石にするのは極めて自然な考え方だ。
そしてタイトルの可能性がより高い状態で残った、国王杯、チャンピオンズリーグに心血を注いだ・・・
なるほど、非常に納まりのいい話ではある。

ただしこの場合、2シーズン目となる来季は、“攻撃を強化する”ことが前提として存在しなければならない。

リーガの特性と現在のチームのギャップは解決されずに、今シーズンは終りを告げた。
バルセロナが異常とも言えるペースで勝ち点を積み重ねていく以上、直接対決で相手の勝ち点を譲らないのは勿論のこと、残る19チームからどれだけ勝ち点3を強奪できるか?

そこにリーガ・エスパニョーラ制覇のポイントはある。

より少人数で、より省労力で、より効率的にトランジションの速度を上げる。
これが土台である。

同時に、相手が自陣に引き篭もってリトリートしてきた場合のこじ開け方、強引な得点のアプローチが必要不可欠となる。
これが2年目に求められる+α・・・と言うことだ。





次いで考えられるのは、アンチ・バルセロナとしての性質を特化させることだろう。

リーグ制覇は直接にバルセロナを叩かなければ叶わないとモウリーニョが踏んだとすれば、リーグ全体とのギャップに目を瞑ってでも、この方針を打ち出す可能性は充分にある。

昨季、マヌエル・ペジェグリーニの元、レアル・マドリードが打ち立てた勝ち点96は、クラブの最高記録を更新するものだった。
一方、今季モウリーニョの元で獲得した勝ち点は92。
単純な比較はできないが、実際に4ポイントの損失があったわけだ。

しかし見方を変えれば、前半戦の連携が不十分な中、行われた試合を・・・
そして中~後半戦、何人もの怪我人が重なった影響などもあって失われた勝ち点のいくつかを取り戻せば、来季こそ本当の優勝争いに手が届く。

それよりも、バルセロナを殺しうる武器が、“猛毒”がこのチームには必要だ――

このように、指揮官が考えていたとしたら・・・?


その先にあるのは、今季を上回る凄惨な戦いだ。
インテルにおける2シーズン目、カルチョすべてを敵に回したあの時以上のものになると見てよい。




これまでも再三述べてきたように、そのアプローチはスペインそのものを敵に回しかねない危険性を秘めている。

スペインという文化圏の価値観そのものに喧嘩を売り、彼らが求めるのと異なる形で結果を手にしようと試みだからだ。

クラブ内部、マドリディスタ・アナリスタの一部だけでなく、結果が出なくなったその時はマドリディスタ・ノルマルも一斉に騒ぎ出すだろう。
現在モウが行っているのは、元々客観的に見れば、スペイン人が自然と魅力的に感じるようなフットボールではないのである。

クレは勿論、スペイン中と、マドリディスタと、UEFAとも現在の関係を継続することの意味――
・・・あまりにも困難な道だ。

それでも、モウ自身がそれを『是』とした場合、闘争は断行されることになる。

勿論、よりスペインのジャッジング基準にあった形に、プレッシングやボディコンタクトの細部を手直しするなど、"修正案"を施す可能性は残されている。
ただし、基本的にスペインそのものフォーマットに合わない形であること・・・
この点は、肝に銘じておかなければならない。

新グランデ・インテルは、指揮官の言動そのものは攻撃される一方、そのクオリティと結果に対しては万人が一定の評価を与えていた。
少なくとも、与えざるを得なかった。

が・・・今回は訳が違う。
あの時とは異なり、勝利の先に結果とマドリディスタの歓喜以外は何もなかった――

そんなシナリオすら、覚悟して臨んでおく必要がある。



何にせよ、予想の成否、その一端が伺えるのは、2~3ヶ月ばかり先・・・
シーズンが開幕してからということになる。


※~おわりに~

仮にモウリーニョが2シーズン目を、筆者の思い描いている理想通りにマネジメントを進めたとする。
守備と全員が連動する土台の上に「第2、第3の引き出し」、つまり守勢に回った相手から無理やりにでも得点を強奪する動きを加えようとしている場合だ。

それでも、懸念は残る。

そもそもスペインに、レアル・マドリードにやってくるような選手たちが、多分な自己犠牲と得点の可能性を一部放棄してまで、失点のリスクをケアしようというモウリーニョのやり方に、どこまで共感してくれるのか・・・?
という問題だ。

代表論でも述べた通り、文化ごとの最適解は必ずある。
クラブチームの場合、各国から異なるベースを持つ選手が集まって集団を形成しているとは言え、

そのリーグを選んでやってきている

以上、スペインにはリーガ・エスパニョーラの一般的傾向に合わせた選手が、自然と集まってくるものだ。

選手の価値観に合わないフットボールは、必ず心身のバランス、コンディションに問題を発生させる。
選手がモウリーニョに心酔し、そのために大きな犠牲を払おうと努めてくれたとしても、だ。

それが数えるほどならいい。
だが、チームの大半がそうした無理を、フットボールをする上で充分な楽しみを得られずにプレーすることになっているとしたら・・・?

ファンの反乱よりもメディアを巻き込んだ騒動よりも、バルセロナのクオリティよりも、自分にはそれが恐ろしい。

故に今回の連載では、殊更に『ギャップ』の問題について言及したのだ。


自分は、ジョゼ・モウリーニョを信じている。


彼のすべてを肯定することはできない。
だが、彼の可能性に関して言えば、すべてが頓挫するまで応援すること、精査すること・・・

見守り、支え続けることを、決して放棄しない。

願わくば、現在移籍市場でレアル・マドリードに続々と加わっている新たな選手たちが、モウリーニョのやり方、今現在チーム内で行われているフットボールを理解した上で、その理想・最終型の実現に向けて力を貸してくれることを――

彼の周りにいる人達、それこそマドリディスタ・アナリスタや古参派のフロント勢を含めて、皆が彼を理解しようと努めてくれることを望んでいる。

理解してくれ、とは頼まない。
理解しようとしてくれるだけで、それだけで充分なのだ。



チェルシーで、インテルで築くことができたフィーリングを、レアル・マドリードでももう一度・・・

未だモウ本人の口から言及されていない、

クラブとの一体感、フィーリングの形成

が、2シーズン目こそ成されること。


これをただひたすらに、切に望んでいる。
<了>



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【2011/06/06 23:31】 | モウリーニョなこと
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「~終わりに~懸念」について
ヘロドトしす
blog読ませて頂きました。すごく勉強になります。特に最後の「懸念」については、色々考えさせられました。

私の感覚では大丈夫なんじゃないかな、とかなり楽観視してます(笑)。
主力メンバーの多くは切迫感を持っていると感じています。

やはり昨シーズン(2009-10)のレアルの失敗は印象深かったです。特にクリロナさんは史上最高額で移籍した事もあり、相当失望したのでは、と思っています。主将を務めたW杯でも散々でしたからね。当時のニュースにも深く傷心している様が報道されていました(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/liga/article/193)。

若い選手はそれほど無いと思いますが、他の主力選手(例えば樫やアロンソ等)も、内外から相当なプレッシャーを与えられているハズです。また自身のプライドも相当傷ついているのではないでしょうか。

モウリーニョ主導で獲得した選手を見ると、その多くが献身的な選手です。それはチームとして勝利を最優先する為なのではと思います。

現在エゴが見え隠れするのは、主力の中ではベンゼマくらいかな、という風に見てますね。
イグアイン、カカは来シーズンが勝負だと考えていると思います。

僭越ながらコメントさせて頂きました。来シーズンが楽しみですね!!でわでわ。


Re: 「~終わりに~懸念」について
白面
おわ!
わざわざ丁寧かつ素敵なコメント、ありがとうございますm( _ _)m

選手とモウの信頼関係に関しては、おっしゃるとおり主力の中で不安なのはベンゼマぐらいなものでw
ただ、選手の資質的に本当にやれるのかな?向いてるのかな?というのは少し引っかかってます。

でも、おっしゃるとおり・・・
勝てなかった時期が続いたことで、いい形でモチベーションに昇華し、うまく適応してみせてくれてこそワールドクラスたちと思って期待することにします(*^^)v

そして、来季こそは是非にCL圏内にビルバオを!w


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この記事へのコメント
「~終わりに~懸念」について
blog読ませて頂きました。すごく勉強になります。特に最後の「懸念」については、色々考えさせられました。

私の感覚では大丈夫なんじゃないかな、とかなり楽観視してます(笑)。
主力メンバーの多くは切迫感を持っていると感じています。

やはり昨シーズン(2009-10)のレアルの失敗は印象深かったです。特にクリロナさんは史上最高額で移籍した事もあり、相当失望したのでは、と思っています。主将を務めたW杯でも散々でしたからね。当時のニュースにも深く傷心している様が報道されていました(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/liga/article/193)。

若い選手はそれほど無いと思いますが、他の主力選手(例えば樫やアロンソ等)も、内外から相当なプレッシャーを与えられているハズです。また自身のプライドも相当傷ついているのではないでしょうか。

モウリーニョ主導で獲得した選手を見ると、その多くが献身的な選手です。それはチームとして勝利を最優先する為なのではと思います。

現在エゴが見え隠れするのは、主力の中ではベンゼマくらいかな、という風に見てますね。
イグアイン、カカは来シーズンが勝負だと考えていると思います。

僭越ながらコメントさせて頂きました。来シーズンが楽しみですね!!でわでわ。
2011/06/07(Tue) 01:52 | URL  | ヘロドトしす #-[ 編集]
Re: 「~終わりに~懸念」について
おわ!
わざわざ丁寧かつ素敵なコメント、ありがとうございますm( _ _)m

選手とモウの信頼関係に関しては、おっしゃるとおり主力の中で不安なのはベンゼマぐらいなものでw
ただ、選手の資質的に本当にやれるのかな?向いてるのかな?というのは少し引っかかってます。

でも、おっしゃるとおり・・・
勝てなかった時期が続いたことで、いい形でモチベーションに昇華し、うまく適応してみせてくれてこそワールドクラスたちと思って期待することにします(*^^)v

そして、来季こそは是非にCL圏内にビルバオを!w
2011/06/07(Tue) 22:32 | URL  | 白面 #-[ 編集]
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