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2011川崎F総括「その3 指揮官編(前)」よりつづく※

まず結論から言おう。

相馬フロンターレの2011シーズンを、相馬直樹監督の指揮を総合的に評価すれば、

赤点。
だが、追試をパスし、進級を果たした学生


のようなものだと感じている。

続投そのものには、条件付きの賛成。
だが、チームマネジメント、クラブマネジメントの現状が今の状態のままであれば、迷うことなく反対を唱える。
(とは言っても、すでに相馬の来季続投は決定しているが)


――先に紹介したような選手たちと異なり、相馬監督と直に言葉を交わす機会には、一度だけしか恵まれなかった。

あれは春先、震災の影響が各地で色濃く残っている中での、わずか数十秒間の邂逅だったと思う。
自分がかけた言葉は、せいぜいが二言か三言。

“らしい”戦いをしてください。期待しています
どんなスタイルが見られるのか、愉しみです

と。
指揮官は、満面の笑みでこう返してくれたものである。

応援ありがとうございます。頑張ります

と。

一見すると、これまでに紹介してきた、若手選手たちの返事に通ずるものがある。
だが、その実中身は、徹底的に異なる。

感じたのは自信、意欲、稚気。
そして慢心。

それは、相馬直樹という人物の人間的な魅力を、存分に感じさせてくれる体験だった。
情熱と才気、そして自信や自負が、言葉や身のこなしの端々に表れる。
なるほど、これが「エリート」というものか、と実感したものである。

一方で、こんな予感も覚えた。

予期せぬ壁、困難にぶち当たった時が危ない。
この自信が崩れた時にどうなるのかが、彼を見極める試金石になる


と。

相馬は典型的な勝者である。
常勝軍団、Jリーグきっての名門、鹿島アントラーズの黄金期を作り上げ、日本初のワールドカップ出場メンバーとしてフランスへ渡り、以後も日本フットボールのトップシーンで戦い続けた。
そこで培った自信と自負は、彼を彼たらしめる、人間として最大の武器である。

だが如何せん、これまで彼が経験してきた戦いは、突き詰めればすべて

相馬直樹個人の

それだ。
どれほど非力であっても、壁が高くとも、自身の研鑽次第で、いずれは超えられる。
相馬直樹という個人の資質次第で、ストレートに結果が出る類の営みばかりなのである。




翻って、監督業、他者をマネジメントするという行為は、根本からその本質が異なる。
自分を理解し、自分を作り変えるために、必要な行動を選択していくのではない。
他者を理解し、他者を自分の望んだ方向へ誘導して導いていくために、必要な行動を

対象となる他者自らの意思

で取らせなければならない。
同じフットボールというカルチャーの元にありながら、まったく異なる性質を持つ活動なのだ。

彼は、そこを見誤った。
自分が過去、あるいは若かりし頃の自分がこの時代に存在していたら、その延長線上に『可能』だろうと判断したことを、そのまま川崎の現存選手たちに押し付けてしまった。


故に、相馬のマネジメントは瓦解した。


例えば、相馬直樹個人にとっては当然のこと、可能な営みであったとしても、現在川崎フロンターレに所属している選手たちにとって、それが実現可能かどうかは、まったくの未知数だ。
やり方さえ教えれば誰でもそれが実現できるというなら、フットボール界は今頃メガクラックで溢れかえっているし、子どもの学力低下が問題になるようなこともない。極端な例を言えば、そもそも世界がここまで衰退していることもなかったろう。

だが、現実はそう簡単ではない。

何もない所に、まったく新しい力を芽吹かせる(根付かせる)

というのは、完全にそれ専用のメカニズムを、技術を、知識を必要とする営みなのだ。

ましてや、個人の能力の伸長だけでなく、複数の人間が集団でそれぞれのタスクを遂行し、結果として顕れる“現象”を作り出すともなれば――その難解さは、自分如き若輩では、あらゆる言葉をもってしても語り尽くせない。

しかしそれがフットボールの、チームマネジメントというものだ。


結局、相馬直樹が犯した最大の過ちは、

選手の身の丈に合わないどころではない、選手の特性を無視したタスク

を要求し過ぎたことだ。
間違いなく、最大の過失と言ってよい。

最も顕著な例を言えば、井川や菊地に最終ラインからの組み立てと、高いラインにラインを押し上げることを求めた点だろう。

これは相馬が求めるスタイルが、前線から運動量を持ってハイプレス(敵ゴールになるべく近い位置から、ボールを持っている相手に圧力をかけ、これを奪取し、自分たちのものとする)を基軸とした、ライン間のバランスを取りつつ攻め勝つ、そういったフットボール像であることに起因する。
※ちなみに4-4-2のシステムにこだわり続けたのは、3トップを構成するにはFWが不足し過ぎていることや、4人のMFで中盤を構成するにしても、ライン間のバランスが取りにくい=相手にフリースペースを与えてしまいやすくなる4-3-1-2等のシステムを取るのは、リスクが高いと判断したためではないかと考えられる。
また、4-4-2というシステムが、比較的どんな選手でも容易に受け入れることのできる、グローバルな布陣であることも影響しているのかもしれない


このスタイルを完璧な形で遂行するためには、どうしても最終ラインを高く設定し、相手陣内でも圧力をかけてボールホルダーを押し込めるよう、敵陣ゴール寄りにピッチの人口密度を高めなければならない。
中盤の底に配置される2人のMFが、よりゴールに近い所でボールを受けたり、フリースペースに走りこむ動きを要求されることになる分だけ、センターバック(以下CB)が司令塔としてのタスクを兼任しなければならなくなる。

加えて、自軍の最終ラインを時にはハーフェーライン近くまで押し上げることになるのだから、相手の俊足FWの裏への飛び出しを未然に防ぎ、カバーリング能力と、更には1vs1での守備力にも秀でていなければならない。当然、CB自身が彼らと対抗できるだけの、足の速さを備えていなければならないわけだ。
でなければ、相手に前線からのプレッシングを掻い潜られ、パスを通されてしまう度に、リターンに見合わぬ絶対的な危機を、リスクを抱え込むことになる。




無理だ。

人間には、向き不向きがある。
井川も菊地も、ヒロキとて例外ではない。
現在川崎フロンターレに所属しているDFたちに、相馬の理想を背負わせることは不可能だ。

勿論、彼らだって他者に勝る強力な武器を持っているからこそ、日本のトップリーグで戦えてきたわけだが……
それは彼らの長所を、用兵に寄って最大限引き出せた場合に限ってのこと。

総合力では他の選手に一歩も二歩も及ばないからこそ、(継続的に)代表に呼ばれることもなければ、ビッグクラブから声もかからない。
周囲の評価は、何よりも雄弁に彼らの実力を物語る。残酷なまでにフェアな現実だ。

しかし、相馬はそれでも、彼らに不慣れなタスクを遂行することに固執し続けた。
結果、両CBからかつての自信や輝き、守備力も安定感も失われ(井川の状態は極めて深刻だ)、パフォーマンスを低下させた。

彼らのように、チームにおいて絶対的な地位を確立できていない選手たちは、指揮官にやれと言われればその通りにやるしかないのだ。
うまくいく、いかないの問題ではない。
指揮官の望むタスクを実現できなければ、他の選手に取って替わられてしまう可能性があるのだから、それはもう無理を承知でもやらねばならなくなる。

選手編で触れた、

指揮官の要求したタスク(ピッチ内に限らない)を、全力で遂行しようと努めているか

というのは、まさにこの部分に当たる。

その意味で、選手たちは懸命だった。
仮にイタリアなら、「小学生や中学生程度のプレー」と、強烈な揶揄でもって批判されかねないクオリティしか見せられない、意に沿わないプレーを要求されても、自分のできる範囲で遂行しようとは努めてはいたのだから(指揮官に勇気を持って反対の意思を表しきれなかったという点で、過失0とは言えなくなってしまうが)。


ならば責務は、罪業は指揮官が背負うべきものだ。

他にも例を挙げればきりがなくなるので割合するが、

選手の特性に合ったチームづくり

という点で、相馬は完全に失敗している。
谷口の実戦における機能性を最後まで信じることができず、使いこなせなかった高畑前監督と同じどころか、それ以上にひどい。


強調をしつつ、何度でも言おう。

川崎フロンターレは、超一流選手の集まるメガクラブではない。
超一流にはなり切れないものの、限られた『1』、特定の“武器”だけは強烈な殺傷力を隠し持つような、異端児の揃う個性派集団なのだ。


彼らの持つ個々の特性を生かさない限り、上位に進出できる芽などない。

だからこそ、「川崎フロンターレを率いる場合」という条件下においては、指揮官の評価条件に

この限られた戦力を、最大限に生かすことに適したチーム作りをやろうとしているか

という項目が入ってくるのである。


さて……
相馬は真実、頑迷にも己が理想を追い続けたのか。
あるいは、何か別の方法を模索しようにも、余裕がないが故にそれができなかったのか。
それとも、なかったのは能力か。


何にせよ、力がないということだけは確かである。


少なくともスタイルに幅がない、臨機応変性に欠ける、用兵に問題があるという評価は、多くのサポーターの間で共通するところだろう。
他にも課題は山ほどあるが、数ある問題の中でも、この過失は致命傷だったと言える。

つづく

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【2011/12/15 23:46】 | 川崎フロンターレなこと
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KKGT-R
相変わらずの慧眼で。
確かに川崎の選手は“腕に覚えあり”率高いです。

そこ活かすのが監督のマネジメントなんだけど、活かしきれてない以前に、その気無いらしい。
終盤になって、戦術いじりましたよね。
で、いくらか上向きになったところでまた戻した。
“あーやっちゃった”
これの繰り返し(笑)。

養父返却に加えて、
ダニエル・・・・どぉなんですか(笑)。
誰か貸して下さい。横山とか黒津とか・・・




同感です
蹴球狂
全く同感です。

守備、攻撃共に川崎の選手の特長を無視した采配でした。
それと気になるのがコーチ陣とのコミュニケーションです。前に出ないGKとハイラインのDF陣、タイミング悪く前線守備をするFW陣と後方、4バックなのに3バックより狭小な陣形等々、守備コーチとGKコーチ、攻撃コーチと守備コーチで掴みあいの喧嘩をしてもおかしくない陣形、陣容が続いているのが不思議です。

今年の戦法なら川崎から出る選手はいても入る選手は少ないと思います。補強は外国人頼み?

コメントありがとうございます
白面
>KKGT-Rさん

どもです!お忙しい中、ありがとうございます。

相馬の場合、その気がない以前に

「そのやり方がわからない」

っていう可能性はあるのかな、と思いました。何より、圧倒的に経験が足りませんし、書いた通り
「成功の味」
を知り過ぎてる。
二の手、三の手を用意しておかないと、職場や社会でたちまちいらないもの扱いされる的な、リスクマネジメントを知らないんだろうなと心底感じます(苦笑)

その点、モウリーニョなんかは辛酸嘗め尽くしてますからね……
やっぱ苦労は若いうちにしておくべきとか思うと、今の自分の状況も少しは許せる気がしてきますよ(´Д⊂ヽ←空元気

ぶっちゃけ、出番作れないのに若手囲ってても意味ないので、そういう選手は外に出して経験値積ませろよと何度感じたことか(´・ω・`)
ただ、日本の場合はレンタルがかなりの高確率でそのままサヨナラに繋がるので、選手も慎重になって、外には出たくないという意思が働いてしまうのかもしれない、とかは考えることがあります。

何にせよ、今の体制で芽はないです。
再来年、J1でお会いしたかったのに、最悪入れ替わりで我々が下に落ちていく危険性も充分かと……

>蹴球狂さん

コメントありがとうございます。

今回は時間の都合で書けませんでしたが、コーチ陣の大人しさにも、実はおおいに疑問を感じているんです。
皆揃って、指揮官と一緒にあたふたしているか、後ろを追走してばかりいる。

例えば鬼木、寺田…みな愛着はある人物ですが、コーチとして本当に最適な人選かと聞かれれば、以前からそこはおおいに疑問でした。
勿論、クラブOBで伝統を伝え、調整役に回れるタイプの人材も必要ではありますが、それだけでは真の強豪にはいつまで経っても成り得ない。

次回でまた、監督・コーチ周りはあれこれお話ししたいと思います。


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2011/12/16(Fri) 06:09 |   |  #[ 編集]
相変わらずの慧眼で。
確かに川崎の選手は“腕に覚えあり”率高いです。

そこ活かすのが監督のマネジメントなんだけど、活かしきれてない以前に、その気無いらしい。
終盤になって、戦術いじりましたよね。
で、いくらか上向きになったところでまた戻した。
“あーやっちゃった”
これの繰り返し(笑)。

養父返却に加えて、
ダニエル・・・・どぉなんですか(笑)。
誰か貸して下さい。横山とか黒津とか・・・


2011/12/16(Fri) 08:00 | URL  | KKGT-R #-[ 編集]
同感です
全く同感です。

守備、攻撃共に川崎の選手の特長を無視した采配でした。
それと気になるのがコーチ陣とのコミュニケーションです。前に出ないGKとハイラインのDF陣、タイミング悪く前線守備をするFW陣と後方、4バックなのに3バックより狭小な陣形等々、守備コーチとGKコーチ、攻撃コーチと守備コーチで掴みあいの喧嘩をしてもおかしくない陣形、陣容が続いているのが不思議です。

今年の戦法なら川崎から出る選手はいても入る選手は少ないと思います。補強は外国人頼み?
2011/12/16(Fri) 10:41 | URL  | 蹴球狂 #cVdVeq5I[ 編集]
コメントありがとうございます
>KKGT-Rさん

どもです!お忙しい中、ありがとうございます。

相馬の場合、その気がない以前に

「そのやり方がわからない」

っていう可能性はあるのかな、と思いました。何より、圧倒的に経験が足りませんし、書いた通り
「成功の味」
を知り過ぎてる。
二の手、三の手を用意しておかないと、職場や社会でたちまちいらないもの扱いされる的な、リスクマネジメントを知らないんだろうなと心底感じます(苦笑)

その点、モウリーニョなんかは辛酸嘗め尽くしてますからね……
やっぱ苦労は若いうちにしておくべきとか思うと、今の自分の状況も少しは許せる気がしてきますよ(´Д⊂ヽ←空元気

ぶっちゃけ、出番作れないのに若手囲ってても意味ないので、そういう選手は外に出して経験値積ませろよと何度感じたことか(´・ω・`)
ただ、日本の場合はレンタルがかなりの高確率でそのままサヨナラに繋がるので、選手も慎重になって、外には出たくないという意思が働いてしまうのかもしれない、とかは考えることがあります。

何にせよ、今の体制で芽はないです。
再来年、J1でお会いしたかったのに、最悪入れ替わりで我々が下に落ちていく危険性も充分かと……

>蹴球狂さん

コメントありがとうございます。

今回は時間の都合で書けませんでしたが、コーチ陣の大人しさにも、実はおおいに疑問を感じているんです。
皆揃って、指揮官と一緒にあたふたしているか、後ろを追走してばかりいる。

例えば鬼木、寺田…みな愛着はある人物ですが、コーチとして本当に最適な人選かと聞かれれば、以前からそこはおおいに疑問でした。
勿論、クラブOBで伝統を伝え、調整役に回れるタイプの人材も必要ではありますが、それだけでは真の強豪にはいつまで経っても成り得ない。

次回でまた、監督・コーチ周りはあれこれお話ししたいと思います。
2011/12/16(Fri) 23:22 | URL  | 白面 #-[ 編集]
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