インテルやカルチョに関する話題多め
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

浦和の差別問題について、私見をまとめました。
前回から続きものの内容になりますが、メモ書きと言うにはボリュームが膨れすぎたこともあり、久々にQolyさんにも寄稿する形で公開しています。

【コラム】芝生の上の差別(後)



以下原文。


 想定範囲内の結果に落ち着いた――というのが、まず率直な感想だ。
 
 浦和の人種差別横断幕に対して協会が下した判断は、ホームスタジアムでの無観客試合。言うまでもなくJリーグ史上初の処分であり、無人のスタジアム内で11人と11人が戦うというのは、欧州の主要リーグでもなかなかお目にかかれる光景ではない。言うまでもなく厳罰だろう。

 協会以上に強い指針を打ち出したのが浦和のフロントだ。件の横断幕を掲げた当事者は勿論、関連サポーターズグループのメンバー全員に対し、無期限の入場禁止を発表。更には暫定的とは言え、すべての浦和サポーターに横断幕の使用とヤジの禁止を求めるという、極めて強硬な対応である。サポーターの反応次第では、いつまでこの状態を引き伸ばすのかは不明瞭な状況だ。
 
 両者は、どちらもベターではあるが、ベストではない爪痕を刻んだという点では共通している。まず協会の判断については想定内だが、それだけに残念な印象が強い結果になってしまった。
彼らが浦和に下した処分の問題点は、以下の通りである。

(1) 自浄作用を促すという点で、勝ち点没収に比べ効力が弱い。
(2) 浦和サイドだけならともかく、次戦の対戦相手であった清水のサポーターは完全にとばっちり。宿泊施設や交通機関の予約(無論アウェーのバスツアー等)への対応にも明確な言及がなく、前もって準備していた客に対しての保証が未知数。
(3) 上記理由から、『一握りの暴徒のために、顧客全体が損をしかねない』というイメージを内外に広めてしまった。

 この内、(1)については以前に触れているため、詳細は割愛させていただく。要約すると、多大な損益という点でフロントへの制裁としては強力だが、レイシストに対する影響が、比較的短期間で弱まってしまう問題があるという話である。
 スタジアムへの入場が不可能とはいえ、あくまでも一試合は一試合である。騒動の規模からも一時は鳴りを潜めるだろうが、愚か者ほど忘却は早いもの。時が経てばまた形を変えて、何らかの形でレイシズムが台頭する危険性が高い。こうした背景から、今季いっぱいは痛みの続く勝ち点剥奪を筆者は主張した訳だが、協会もそこまでは踏み切れなかったのだろう。学生のテストで例えるなら、60点で赤点は回避だが、80点に到達できなかった以上、優の成績を与えるには到らず…といったところか。

 (2)については、ある意味では浦和の対応を見定めるという懲罰的な意味合いを含んでいるのだろうが、一方で明確な基準を設けなかったことで、最悪の場合訴訟にまで発展しかねないリスクがあった。そうなっては、Jリーグ全体の更なるイメージダウンは避けられなかったはずで、協会側の認識の甘さ、メディア戦略の不足を嘆かずにはいられない。
最終的には16日、浦和側が宿泊費のキャンセル料などを含め、損害を証明できる書類を用意すれば保証に応じるという形で、リスクは一応の決着を見た。とは言え、悪質な観戦者や業者が悪意を持ってこれに臨めば、更なるリスク発生の可能性は今もって残ってしまっている。
 何よりも、大事な顧客(それも万単位だ)に不要な労力・損害を招いたという過失は動かしようがない。We are Reds の精神でフロントとサポが痛みを分かち合える浦和側はまだしも、清水側は120%のとばっちりだ。リーグとクラブの、ある意味では勝手な都合で、大切な顧客に多大な迷惑をかけたことになる。

 (3)の『日本国内における、フットボール全体のイメージダウン』は更に深刻な問題だ。
周知の通り、この処分についてはNHKや報道ステーションのトップニュースで扱われた。ネガティブな出来事ばかりが取り上げられることに嘆きや憤りの声を漏らしたサポーターは、相当数存在だろう。各メディアの報道を見てみれば、清水サポーターは勿論、大多数の浦和ファンの受けた損害も深刻であることを、殊更に強調するようなニュースが目立つ。
筆者としては、人権侵害、しかも人種差別という決定的な問題を公の場で起こしてしまった以上、この大々的な報道自体は当然のことと思う。実際フジ以外の民放各社は、スポーツニュースではなく社会的ニュースとして問題を取り上げていた。世間の関心の高さがうかがえる。

 それほどに、差別は重い。

 有耶無耶に隠蔽した場合こそ言語道断で、悪い意味での注目は、ある種必然の罰とさえ言える。悔しさを噛み締めてはいるが、それ自体に文句をつけるのは筋違いだろう。粛々と受け止め、再発防止に努めていくしかない。

 問題なのは、一部の問題客とクラブ側の対応の甘さが原因で、9割9分の他の顧客にも害が及ぶスポーツですよ――と喧伝されてしまったということの方である。メディアとしては当然の対応なのだが、実に始末が悪い。
勝ち点の剥奪であれば、当事者である浦和の関係者以外には、直接的に金銭のダメージは発生しないで済んだ。差別行為を行った、その行為に加担した者は厳しく罰するが、それ以外の顧客は保護できていた。無論どちらの道を選んだところでリスクは発生してしまうが、特に対外的なデメリットという点では、無観客試合の方がはるかに大きい。

 あるいは今後、この注目を逆手に取って、人種差別撲滅を促すキャンペーンなどを展開していくというのであれば話は別だろう。しかし、現時点で協会に具体的な動きはない。今後続けて何らかの補助的な施策を打っていかない限り、

面倒なことは全てクラブに任せる。お前ら、今後はしくじるんじゃないぞ――

という、恫喝的な対応と取られてしまっても仕方がない。総じて、前向きに発展的変化を促進する決定ではない印象が強い。

 この処分の問題点の煽りをもろに受けたのが浦和フロントであり、大多数の浦和サポーターたちだ。

 個人的見解で言えば、浦和の淵田社長が発表した施策は、強硬で極端に過ぎる。
まず、横断幕の一切を禁止したのは、言語道断な対応だ。よりリスクとサポーターの損失が少ない対応を、選ぶことはできなかったのだろうか。例えば受付窓口を設け、使用物の表・裏の模様を確認し、正式な認可を得さえすれば、大手を振って応援に使用できるようにする等、工夫の使用はあったのではないか。
確かに、一つひとつ確認する必要がある分、運営面でコストはかかるかもしれない。が、すべてを禁止するような強攻策よりは、はるかに対外的なイメージも良い。極論から極論へ移行したが故の悲劇と言うことができる。今回は急場だったため、それだけの体制を整えられなかったとしても、今後早急に改善して欲しい点のひとつだ。

 ヤジの禁止については、なるほど、確かに心ない罵声の数々は聞いていて気持ちがよいものではない。他方、だらしのないプレーに対するブーイング・叱咤と、悪戯に人格や人権を侵害するヤジ・罵倒の明確な区別がまだついていない現状では、些か急ぎすぎた印象が否めない通達だ。これでは感情を上下させる、熱気を煽る応援が極めて困難になる。
せめて後日ガイドラインを作成することを約束し、複数の信頼できるサポーターズグループらと連携してより建設的な解決を目指していく――であるとか、そういった指針を表明すべきだった。メディアが取り上げるのは一発目の会見のみで、後は浦和がどれだけ努力をしても、発展的改善策を打ち出していってくれたとしても、そんなものを改めて喧伝してはくれない。初期対応としては致命的な問題点だ。協会と周囲から受けた圧力によって恐慌に駆られ、冷静さを欠いた決定を下してしまった感が否めない。

 こうなると、事は浦和だけの問題ではない。明日は我が身と、いつ応援が制限されるか、言論を統制されるかわからないと、不安を抱えるサポーターは各地にいることだろう。表現の自由を謳歌するためのルール整備を怠ってしまったが故に、一層の不自由をサポーターに強いているわけである。この状態で我から手を挙げ、スタジアムに足を運んでくれる新規層は何人存在することか?
 
 余談だが、巷で話題になったセルジオ越後氏の手記には心底呆れる一方、一部だけ同意できる部分があった。バスクと日本の事情をごちゃ混ぜにするなど、その感性には愕然とさせられたが、『言葉狩りに対する懸念』という部分については、なるほど理解ができる。
確かに、このままでは埒が明かなくなる。何が差別で何が戦闘なのか、その明確な基準が存在しないためだ。早急に具体例を織り混ぜた「これはよし、これは駄目」の一覧表のひとつも作成しなければ、スタジアムは一気に窮屈なものになっていくだろう。

 閑話休題。私見を簡潔にまとめるなら、

① 思想・信条の自由はともかく、あらゆる形の差別が、表立って発言しては大問題になる。フットボールの世界においては、殊更差別に対して敏感な対応、先進的な感性が要求されるということ。
② 上記を理解せずに活動する者(例えば今回、問題を起こした連中)は論外として、何が差別か、何が差別でないかの区別が、現状極めて不明瞭であること。
③ ②から、一刻も早くよりわかりやすい形で、この問題に関する情報の周知、学習の機会を協会は提供する責務があること。また、クラブにその対応を任せるというのであれば、必要な資金やフォーマットを提供すべきであること。

――以上の3点に集約できる。③については一応、FIFA基準に則った国内作成の規定があるにはあり、昨年の時点でクラブ関係者に詳細が通達されてはいたのだが、筆者に言わせれば

だからどうした?

である。それが肝心の観戦者(差別に纏わる問題行動起こす者をファンやサポーターとは言えないため、あえてこうした表現を使用している)に全く伝わっていないからこそ、起きてしまった問題なのだ。機能しない法典に存在意義はない。

 これが日本人の苦手な分野であることは、充分に理解できる。それでもこと差別問題に関しては、誰の目にもわかるような白と黒の線引きを、権威を持ってはっきりさせなければならないのだ。

 この一件、これですべてが片付いた問題ではない。フットボールに限らず、日本のスポーツ文化醸成の意味で極めて重要な取り組みが、今まさに動き出したばかり……というのが、現時点の率直な感想だ。

 船頭多くして船山に登る。
確かに初期対応に致命的な過ちがあったとは言え、浦和ならびに各クラブのフロントばかりに負担をかけ、ストレスを強いてしまっては、悪戯にファンを萎縮させ、市場を縮小させる結果に繋がりかねない。協会ないし村井チェアマンは、強力なリーダーシップを発揮して、速やかに事態の改善を図らなければならない。

 彼らは果たして、船頭役として事態を正しい方向へ導いていけるのか?
 あらゆるフットボールファンにとって、この問題は他人事ではない。一人ひとりが、今後の展開を慎重に見極める必要がある。

<了>


※ブログ村へ戻る→にほんブログ村~川崎F~


にほんブログ村 サッカーブログ 川崎フロンターレへ

   ↑  ↑ 
1クリいただけると更新頻度が上がります。よろしければ是非。

【2014/03/20 21:28】 | 他国リーグや各種協会・組織なこと
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。